思考の詳細

SNSでは説明しづらい詳細について書きます。

カントの第一アンチノミーに対する考察

石川文康氏の著作「カント入門」(ちくま新書)を読んだ。第1章に、カントが人間の理性に対して疑問をもった理由として、理性は二律背反する命題を両方証明してしまう点があった。カントのあげた二律背反する命題の例の最初にくるもの、すなわち第一アンチノミーとして、二律背反する以下の命題がある。

 

A:「世界は、時間的、空間的に始まりを有する。すなわち有限である。」

B :「世界は時間的、空間的に無限である」

 

この部分を読んで、証明を「背理法」、つまり、ある仮定を否定した命題に矛盾が生じることを証明することで仮定が正しい事を証明する手法で行うが、本の中の上記Aの証明部分がすぐに理解できなかった。

 

その部分とは、時間の無限を否定する根拠として、「我々は「現在」という完結した時点においてである」とあるが、現在だって、無限の時間の一瞬であって、完結した時点と言えないのではと思ってしまったのだ。

 

しかし、しばらく考えて自分なりに以下の2ステップで納得した。

 

ステップ1:現在というのは、たしかに完結していないとも考えられる。だって、現在に至るまで、やはり時間、空間は無限と考えられないか。実際、実数の稠密性、つまり確定した時間Nにおいて

T=N

それより少し前のn(n<N) で、中点のm=(n+N)/2は無限に存在する。

 

ウサギとカメとの距離を半分に詰めても、その半分があり、その半分の半分を通過しなければならず、またその半分を通過と、半分は無限にあるので、結局ウサギはカメを追い越せない、といういわゆる「ゼノンのパラドックス」だ。

 

ちなみにこの「半分の半分は無限にある」点は数学では以下の通り証明できる。

 

 命題:N、nの中点m(実数)は必ず存在することを証明せよ。

 

 証明:

N>n、m=(N+n)/2と置く。するとN>m>nとなるmは必ず存在する。(ちょっと計算すれば分かる)

 

ステップ2:しかし、ビリヤードのキューで打った白い玉は、真正面の赤い玉に永遠に当たらないのか、というとそれは違う。コツンと当たるし、それは幻想はなく真実に違いない。

 

とすれば、やはり、現実は完結している。

 

という風に、Aの証明を納得した。

 

他方、Aと背反するBの証明は本の通り納得した。つまり、時間的、空間的に有限としたら、その直前に世界を作った存在をどう説明するのか。説明できないから矛盾という事だ。

 

少し考察したところをメモした。

何らかの参考なり、理解の足しになれば幸いである。

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