世界緊張
トランプの勝利は、個人的にはショックだった。
マスコミ予想通り、クリントンが順当に勝つと思っていた。
TV討論会でリードしたし、メール問題も選挙日直前にFBIは再捜査を断念したと発表していた。
トランプはTV討論会で劣勢となり、女性アナウンサーと言い争い、更に「負けたら選挙結果を受け入れるかわからない」と前代未聞な発言をし、完全に負け犬の遠吠え、状態だった。
結局、クリントンが勝つと多くの人も思っていただろう。
だが、結果は逆だった。
トランプは、アメリカの保護主義を掲げ、アメリカ人の本音かもしれない人種差別や女性差別を発言し、自伝によれば「敵には、復讐リストを作っていて、後で徹底的に仕返しする」と言っている人物だ。
ただ一方、一代で不動産王となり、共和党候補になるまで、対立候補を21人を倒してきた運と実力がある。
ところで、民衆は、理想より現実を選ぶという事をここ数年間、僕は痛感してきた。
原発廃止を謳う民主党が、昨年の選挙で再稼働を推進する現実路線の自民党に負けた。
当時、「民主党は耳障りのいい事しか言わない」と言われた。
もっとも政治は、選挙結果よりも、もっと現実的行動をとる。現実的というのは、「世の中こうあるべきだ」と民衆が想像するのと異なる選択肢を選んでゆくことだ。国会前で大規模なデモのあった「特定秘密保護法案」がいい例だ。
要すれば、今の政治は現実路線だ。理想主義は影を潜めてしまっている。
第二次大戦前のドイツでは、ヒトラーのナチス党が政権を取ったが、その理由はベルサイユ条約でドイツが不平等条約を負った民衆の反発から支持を得たものだった。その後、ヒトラーはアーリア人に至上主義、ユダヤ人の大量虐殺を行なった。
危険なシナリオは、現実的政策を出して政権をとったリーダーが暴走するというパターンだ。
ストップする政治的機能がない限り、リーダーは暴走可能だ。
因みに今のアメリカは、大統領は犯罪を犯さない限り、4年間は罷免する方法はない。
では、リーダーは暴走し、世界戦争に向かうのか。
この点の唯一の救いとしては、今のリーダーは暴走したらどうなるかも計算できる人達だという事だ。
世界情勢は、リーダーの一存にかかっている。そして人々はSNS等メディアでリアルタイムで状況を把握する。
かつて国家間の冷戦が「世界緊張」だったものが、今はリーダーの反応を見ながらの定常的な緊張状態が「世界緊張」なのかもしれない。